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グランプリ

上映日 2019.11.2

正しいバスの見分けかた

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高橋 名月(たかはし なつき)

監督高橋 名月(たかはし なつき)

監督高橋 名月(たかはし なつき)

PROFILE

1996年兵庫県西宮市生まれ。
高校在学中に執筆した『正しいバスの見分けかた』が第14回伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞短編の部においてグランプリを受賞。現在、日本大学芸術学部に在学中。意欲的に執筆活動を継続中。

出演

中条あやみ / 岡山天音 / 萩原みのり / 葉山奨之

わたしが『正しいバスの見分けかた』のシナリオを書いたのは、高校3年生の春のことです。わたしはボーッとした子どもだったので、まわりの友人たちが夢や目標を見つけて着々と未来に向けて進んでいる中で、自分がどうなりたいのかわからず、すこし取り残された気分で日々を過ごしていました。そんな中でふと「宇宙人を見た」と話す鮫島の姿が浮かんで、何かに取り憑かれたように夢中になって書き上げたのが『正しいバスの見分けかた』の初稿でした。
鮫島たちは高校3年生という年齢設定なのですが、今思うと「高校3年生」というのは子どもでいることを許される最後の学年だったのかもしれません。シナリオを書いた当時はそんな鮫島たちの姿にある種の憧憬やノスタルジーを抱いていたのだと思います。
わたしたちは大人になると、なんだかよくわからないうちに忙しくなってしまって、いろんな責任を抱えていて、話さなければいけないことも多くなって、どうでもいい話をすることにちょっとした後ろめたさを感じてしまうような気がします。わたし自身も最近その感覚が少しだけわかるようになってしまいました。「無駄口を叩く」なんていう慣用句がありますが、鮫島や藤田、中島や細川に当てはめてみると、彼らはずっと無駄なことを話しているように見えるかもしれません。ただ、一見ただの無駄話にしか見えなくても、なんだか心が通じ合う決定的な瞬間であったり、人生の一大事であったりすることもあるはずです。そういった、ささやかでさりげない感覚を共有できるすばらしい俳優陣とめぐり会えたことはこの映画にとってかけがえのない財産だと思っています。
そうして出来上がったこの映画が、観客のみなさまにどう届くのか、わたし自身も未知数な部分があります。ただ、わたしがどうこう解説するよりも、観客のみなさまの解釈で楽しんでいただいて、日々の生活の中で映画の断片だけでもふと思い出していただけると、大成功なのではないかと思います。